休み時間終了のチャイムが鳴ると同時に、拓也が教室に帰ってきた。 

「拓也どこ行ってたの?」

「隣のクラス」


拓也は席に着いてから、そう言うとため息を吐いた。 

何かあったのかな。


「隣のクラスって、竜司君?」


「そうだよ」


拓也が不機嫌そうだったので、少し心配になった。


「ケンカでもしたの?」

「お前に関係ないだろ」


即答で答えが返ってきた。
しかも、何だか怒ってるみたいだし・・。

最近の拓也は、私が心配するとすごく嫌がる。

反抗期ってやつかな?

ともかく、これ以上詮索すると余計に機嫌が悪くなるのでそっとしておこう・・。


私は、「そうだね」とだけ言って拓也の前である自分の席に着いた。

先生が教室に入ってきて、授業が始まる。


「・・・・・・ゆい」


「なに?」


しばらくして、後ろから声をかけられたので返事をした。


「こっち向けよ」

「今授業中だもん」


「・・・・・・竜司と喋ったことある?」


「竜司君?」


いきなり何だろう?

竜司君のことは拓也がよく話すので知っているだけで、お互い話したことなんかない。


「ないよ。何で?」


「だよな。・・・何か竜司がお前のこと気になってるっぽいからさ」


・・何で私?

竜司君には女関係ではあまり良くない噂が回ってる。
さらに、その対象は大抵年上の女の人だし。

話したこともない私のことを、気になることなんてあるのかな?

・・・拓也、からかわれてるのかも。

「・・そうなんだ」


「そうなんだ、って・・。それだけかよ」


「だって竜司君とは話したこともないし。何とも言えないよ」


「・・じゃあさ、竜司に告白されたらどうすんだよ」

「こ、告白?されないから」

少し胸が鳴った。


「もしもだよ。どうするんだよ?」


何でこんなこと聞くんだろう。

そう聞いてしまったら、なぜか拓也が怒る気がするので私は黙っていた。