僕たちの時間(とき)

 その場から僕らを見渡し、ニーッコリと不敵に笑ってみせる。

「そんなに俺にケンカ売りたい?」

 不機嫌そうな声と相まって、その満面の笑顔が、ものすごく迫力満点。

 ――てゆーか、そもそも誰も言ってないから『外ヅラだけの男』とまでは……!!

 即座にブンブン首を横に振ってみせた僕とは対照的に、

「オマエだオマエ」と葉山は、それこそ芝居がかった不機嫌口調になって応戦する。

「つまんねーことに使ってるくらいなら、その愛想の良さをバンドのために少しでも使ってみやがれ」

「……それを使ってきたんだよ。バンドのために。今まさに」

 その返答で、僕ら一同は一様にキョトンとした口調で「は…?」と返し。

 対して山崎くんは、まるで、やれやれ…といった態度で室内に入ってくると、そのまま渡辺くんが勧めた椅子に腰を下ろす。

 そして投げ出した足を組んでから、改めて僕らを見渡すと。

 少しだけ勝ち誇ったように、それを、言った。


「例の話。――ようやく貰えたぜ、とっつぁんの承認!」


 一瞬だけ訪れた沈黙。

 その後、すかさず「ウソ!?」「マジで!?」と食い付くなりワッと盛り上がる、僕以外の2人。

 ――なんか……僕だけ話が見えてないんですけど……?

 その場の盛り上がりに置いてけぼりにされた僕のことに、気付いてか気付かないでか、

「おい聞いたかよ今の!」と、葉山が背中を力一杯バシバシと叩いてくる。

 ――正直、痛い。

「さっすがセイトカイチョー!! その外ヅラも伊達じゃねーぜ!! なあ、オマエもそう思うだろトシ!?」

「会長の外ヅラについては否定しないけど……でも一体なんの話?」

 さりげなく背中を叩く手から逃れながら怪訝に問い返してみると、ようやっとヤツは、そこで置いてけぼりな僕に気が付いてくれたようだった。

「ああオマエに話してなかったっけか」と、今度は両肩をバンバン叩く。

 だから痛いんだってばよ。