僕たちの時間(とき)

 つまるところ、何が変わるワケでもなく全ては振り出しに戻った。

 結果だけを言うならば、ただそれだけのことだ。

 だとしても……変わったことだって、ちゃんとある。

 めいめいが集まってくる時、今までは手ブラだったのに、今は楽譜やギター等の楽器を携えてくるようになった、とか。

 でもさすがにドラムセットを持参するのは無理だから、ドラム担当の葉山の場合、たまにスティックだけ持参してきては、

 後から先生に怒られないだろうかと心配になるくらい、机をガコガコ叩いていたりする。

 そして僕も……以前に比べて、ほんの少しだけだけど、変わったかもしれない―――。


「てゆーか、いいかげん遅くないか光流」

 僕と葉山とのやりとりなんて何処吹く風で1人椅子に座って黙々と雑誌を読んでいた渡辺くんが、ふいに時計を見上げながら、それを言った。

 ああそういえば…と、僕も葉山と顔を見合わせる。

「まーたどっかで何かに捉まってんじゃねーのー?」

 それを受けて、ああ生徒会長ともなると色々やることあって大変そうだしね…と呟いた僕の言葉を、

「いや、アイツの場合は無駄に外ヅラばっか良いってだけのことだって」と、即座に葉山が大袈裟な手振りまで付けて否定する。

 ――それもどうだよ?

 しかし、言われてみればそれもそうか…と、即座に内心で頷いてしまった僕も、〈同じ穴のムジナ〉なのだろう多分。


「――だぁーれが『外ヅラだけの男』だってェ……?」


 突如として響いてきた不機嫌そうな声にハッとして振り返ると……案の定。

 開け放していた出入口の扉に凭れ掛かるように立ち、山崎くんが、そこに居た。