僕たちの時間(とき)





「――不本意だ、こんなの……」


 性懲りもなく、何度も「ズルイよ、ズルすぎる」などとブツブツと呟き続ける僕に向かい、葉山が「なに言ってんだ」と、呆れたような視線を投げる。

「何だかんだ言って、俺たちと音楽やるって選んだんはテメエじゃねーか」

「それはそうだけど……」

 確かに、それを言われたら反論が出来ないが。

 それでも何かが腹の底で釈然としていないのも確かである。


 つまるところ“あれ”は、ただ単に僕が嵌められたというだけのことだったのか、それとも偶然でしかなかったのか―――。


 結局、それは分からず仕舞いで終わってしまった。

 どんなに問い詰めたところで、あの山崎くんが簡単にタネ明かしなどしてくれようハズもなかったし。

 葉山なんて、そもそもからして“終わり良ければ全て良し”という、結果論至上主義だ。

 問い詰めたところで『そんな過ぎたこたーいいじゃねえか』のヒトコトで済まされてしまう。


 ――ゆえに結果として……まんまと僕は、不信感バリバリ絶好調で、彼らの“仲間”となってしまったのだった。


 だからヤツらは依然として、放課後になると、合唱部の活動が終わった後の声楽室に集まってくる。

 …とは云っても、後から聞いたところによれば、僕と葉山がココで会った以前から、ヤツら3人は隣に在る器楽室で活動しているブラスバンド部の練習上がりを狙っては器楽準備室に集まってた、っていうんだから。

 そのままそこに集まってればいいじゃないか、とも思うんだけど。

 なのに、『あそこは狭い』だの『まだ隣でブラバンが練習してるから』だの『音出せる場所ってなかなか無いんだよなー』だの何だの言っては、結局ヤツらはココに集まってくる。