僕たちの時間(とき)

『ずっと……誰も、“僕”のことなんて必要としてないって思っていたんだ』――と、僕も告げた。


『誰もが僕に「ピアノを弾け」って言うから。ピアノを弾かない僕のことを、誰も“僕”とは認めてくれなかったから。僕自身、ピアノを弾かない僕は何なのか、分からなくなって。――だから、僕そのものが“ピアノを弾く僕”になろうとしたんだ……』

 俯いて語る僕に、誰も何も返さなかった。

『でも、それは逃げていただけのことだって解ったから……』

 だから僕は、もう逃げないよ。

 言いながら顔を上げる。

『欲しいのに何もしないで諦めることだけは、もう絶対にしない。諦める前にトコトン闘う。それで何を捨てることになっても構わない』

 そして僕を見つめた三対の瞳を、一つ一つ、ゆっくりと見渡して。

 キッパリと、それを告げた。


『僕のやるべき音楽は……僕が、決める』