テストが返却された。担任が言うには学年3位の成績だとのこと。

私にはそんな事は興味がない。ただ親に言われる小言が減って良かったと思うくらいだ。

「春菜ちゃ〜ん!!」そう甘い声で呼ぶのは中学からの親友・神田真理子。私が思うに、モテているのは彼女なのだと思う。
私を上目遣いに見て「ねぇ…テストどうだった?」と聞く。

「聞く相手が間違ってるわよ。」と言いながらクラスメイトの長島明を見る。彼が学年1位という噂。そして真理子の好きな人。

「だって、全然話してくれないんだもん…」と机の上に腰掛け、髪の毛を指で絡ませる。パーマをかけている彼女はお洒落で、可愛くて、男なら放って置かないタイプ…だと思う。

この高校に入れたのは奇跡に近いが。彼女の会話には脈絡がなく、理論的でない。
学年首位の男が真理子を相手にするのは少し考えられない。

「真理子はどうだったの?」と聞くと「赤点☆補習決定だって☆」と笑いながら30点のテストをヒラヒラとさせる。

「羨ましい…」

「えっ!?」

つい、言ってしまった。
テストの点数を気にしない彼女が羨ましくて。親に干渉されない彼女が羨ましくて…。

「ううん、何でもない!!私、部活あるから、また明日ね真理子!!」

と言って教室を出る。
ため息をついてから武道場へ向かおうとすると「井田さん。」と誰かに呼び止められた。