「上原!見んな!」
鈴木君が必死に私を引っ張る。
「…何?…拓ちゃんが…」
拓ちゃんが…
「…キ……ス…?」
河野さんと…?
「キスしてる…」
「上原!!行くぞ!」
「……」
涙も出ない
何で、ここで?
みんな見てるじゃん。
「未来!!行こう!」
「みぃたん!」
みんなの声が遠く感じる
何も分からない
分からない
「…拓ちゃんの……」
拓ちゃんの…
「バァーーカ!!!」
それはグランド中に届いたみたいで、周りが一気に静かになった。
「え?未来!?」
河野さんの唇を離した拓ちゃんはやっと私に気付いて目を丸くした。
「……ごめん…梢、鈴木君、田中君…帰るね…」
「上原…」
私は俯いてグランドに背を向けた。
ゆっくり歩いて
歩いて
歩いて
「未来!!」
拓ちゃんが私を呼んだ。
「っ…」
泣かないよ
泣かない。
私は走り出した。
「未来!」
拓ちゃんが名前を呼んでも振り向かなかった。


