漸く開いたドアは大人が横向きで入るのがやっとの隙間だった。

中学3年の3人には少し余裕がある。

廃墟になってから、大分時間が経っているのか2人が開けるのはこれが限界だった。

1人ずつ隙間を通って中に入る。

当たり前だが、懐中電灯の明かりが無ければ一歩も歩く事など出来ない。

「ぅわ、埃ッポ」

最後に入った旬が行った。

床には落ち葉や砂、虫の死骸が転がっていた。

天井には巨大な蜘蛛の巣が至る所に張り巡らされている。

「流石廃墟」

勇は辺りを見回すなりニヤける。

夏希は無言で辺りを見回す。

目に入るのは沢山の背を向けた椅子や診察の受付のカウンター。

椅子は奥にあるドラム缶テレビに向けて並べられている。

右手側は大きな窓が取り付けられているが、割れたりヒビが入っていたりと、無傷の窓は一枚も無かった。

「やっぱ帰んない?」

旬の足は微かに震えていた。

「カルテって何処にあんだよ」

旬の言葉を無視して勇は、遊ぶ様に懐中電灯を揺らしている。

「多分診察室とかじゃない?」