尚子も振り返る。

「きゃああああぁぁー!!」

2人の悲鳴が重なる。

男は左手に持つ生首を後ろに放り投げ、ケラケラと笑いながら走り出した。

この男は無差別に人々を殺す快楽殺人者。

舞台は大山病院。

そして狙われているのは尚子と奈々。

非常口は2人の目と鼻の先。

車椅子は奈々に押され加速続ける。

非常口まであと少し。

「きゃっ!?」

急に尚子の乗る車椅子が大きく揺れ、バランスを崩し横転した。

反射的に背後を振り向く。

「まえ・・・だ・・・さんっ!!」

奈々は男の腕の中で喉をかき切られ、既に目が虚ろだった。

おそらく即死。

男は奈々を支えていた腕を放し、サバイバルナイフを舐めた。

付着した奈々の真っ赤な血を男はニヤニヤと笑いながら何度も何度も、下から上へ舐め回した。