退院する前夜。

『きゃああぁぁー!!』

一階から悲鳴が聞こえた。

それを病室で奈々と尚子は耳にした。

「怖いっ」

尚子は奈々にしがみつく。

「様子を見てくるから、待ってて」

奈々は階段へ向かった。

階段を下りてそっと一階の様子を窺う。

「・・・ッ!?」

1人の男が此方に背を向けて仁王立ちしているのを発見した。

その男の周りには血の海が広がっていた。

その血の海に沈む患者さんたち。

男の右手にはサバイバルナイフ。

左手には少年の頭。

胴体は無い。

奈々は大急ぎで二階に戻る。

既に二階は悲鳴を聞いた人々が非常口に向かって走っていた。

「前田さーん」

病室から尚子が叫ぶ。

奈々は車椅子に尚子を乗せ、非常口を目指した。

尚子はまだ走れるほど回復していない。

「アハハハハー」

背後から馬鹿みたいな笑い声が聞こえてくる。

奈々は走りながら振り返る。

そこに居たのは少年の生首を持った男だった。