『左から5番目』

夏希は少女の声を聞いた。

部屋の何処にも少女の姿は無い。

夏希は言われた通り、左から5番目の鍵を取る。

診察室は3つだが、鍵は全て同じようだ。

「女の子が教えてくれた」

5番目の鍵を見せ、夏希は言った。

「急ごう」

勇の言葉に旬も頷き、事務室を出て階段を駆け下りた。

「何処に返せばいいのかな?」

夏希が診察室の前で首を傾げる。

「俺は診察室1」

勇がカルテを見せる。

右上には『1』と書かれていた。

「俺は診察室3」

旬のカルテには『3』と書かれていた。

夏希のカルテは『診察室2』の物。

鍵を開け、3人いっせいに各自の診察室に入り、カルテを置いた。

鍵はカルテと一緒に診察室2に置いてきた。

「早く帰ろう・・・」

旬の言葉に勿論賛成する。