夏希は自室で大好きなアイドルの音楽をイヤホンで聴いていた。

リビングにある電話が鳴っても判らないように大音量で。

プルルルルル、、、

電話が鳴っているが夏希の耳には入らない。

でも視界の隅で携帯が光るので、イヤホンを外した。

リビングの電話は鳴っていなかった。

「はい、もしもし」

電話の相手は勇。

『何で小野がでるんだよ!?』

「はぁ!?アンタが電話してきたんでしょ!!」

言葉は少し乱暴だが、夏希の顔は笑っていた。

『実はさぁ、、、』

勇の深刻な声で何が言いたいのか直ぐに悟った。

「電話、、、来たんでしょ?」

微かだがノイズが混じっている。

夏希の腹部に冷たい恐怖が走り抜けた。

『来た。それで、、、』

ノイズが徐々に砂嵐へと変化する。

『ザザッ...ザッザッ...カルテ...』

「イヤッイヤッ!!イヤァァァー!!」

夏希は机の上に置いてあるカルテを手に取り、涙を流しながら家を飛び出した。