「もしもし?」

やはり返事はない。

電話を切ろうと耳から受話器を離すと、砂嵐に混じり何か聞こえた。

『ザザ...ザザザ...カ...ッザ...ヘンッザ...ザザザ...オ...ガ...ザ...ザザッ...ザザザ...』

しわがれた声の様なものが聞こえた。

夏希はもう一度、受話器を耳に強く押し当てる。

『カルテノ...ザザッ...ヘンキャク...ザッ...ザザザ...オネガイ...ザッザッ...シマス...ザザザ...』

カルテの返却お願いします?

電話は切れず、砂嵐が聞こえる。

夏希は全てを理解すると、慌てて受話器を戻した。

この日から3日間、一日に何度も砂嵐混じりの電話が来た。

それは決まって夏希が1人の時。

しわがれた声の音は日をおくごとに大きくなっていった。