私の答えに佐倉君は残念そうな顔する。


「あの…「たっくん! 早くしないとポコペン始めるよ」


私が何か言おうとするとそんな女の子の声がした。


「あっ、今いく!」


佐倉君はそう女の子に伝えると須川君と一緒に教室のドアへと向かった。


またダメだったな。


佐倉君の背中を見つめながらそう思っていると佐倉君がこちらを向いた。


佐倉君がこちらを見たおかげで目が合う。


「本。読み終わったら感想聞かせてね」


まさかそんなこと言われるとは思わなくて私は勢いよく頷いた。


私の反応に佐倉君はニッコリ笑うと教室から出て行った。


「たっくん。ありがとう」


本人の前では呼んだことない呼び名を呟いてみたけど、私しかいない教室に何の意味はなくスッと音は消えるのだった。


それが幼い時の記憶。