「逃げて…なん、か…ない」


途切れ途切れにそう呟く自分が酷くカッコ悪く感じる。
俺は梢が好きで、だから付き合ってる。そう思わないと梢を傷つける。


俺は斉藤君を見るために顔を上げると彼はさっきと打って変わって凛とした目で俺を見つめていた。その顔は男から見てもカッコいいと思ってしまった。



「そうですか。僕が言いたい事はそれだけですから、急に現れて申し訳ありませんでした。僕はもう最上さんと別れたお友達なだけなのであまり口出しは出来ませんから。
でも覚えておいて下さい。優しさは時に人を傷付けることを」


斉藤君はそこまで言うと俺に頭を下げて立ち去っていた。



俺の周りではガヤガヤと俺を見ている人達がいて俺はそこから逃げるように歩き出した。


今日は誰とも会いたくない。



そう思っているとズボンのポケットに入っている携帯がメールを受信したのを知らせた。