あたし、花火。[短編49P][企画]

「ありがとう」


 百花先輩は目を瞑って、ゆっくりそう呟く。


 そんな儚げ(はかなげ)な百花先輩がどうしようもなく、愛しく思えた。




「瞼の裏に、何が見えますか?」



 長いまつ毛を見ながら俺が聞くと、百花先輩は目を瞑ったまま、口元を少し緩める。




「キミと、あたしの花火……

それだけが、

キラキラと、一面に――」




 例えそれが今の瞬間だけでも。


 百花先輩の中から、こうやって少しずつ、先生の痕が消えてくれたらいいと思う。




 消えない花火は、ひとつでいいから――。


End.