「え?」

彼女は、驚いた声を上げた。

DVDは既に渡したし、泣き叫んだ後に突然そんなことを言われるとは思っていなかっただろうから。

オレは、ダッシュボードから、和紙に包まれた物を取り出した。



「日本で一番高いところで買ってん」


彼女はすぐには理解できなかったようだった。

「富士山の山頂にな。神社があるねん。そこのお守り。日本で一番天に近い場所やから、他のとこのよりは効果があると思うねんよね。少なくとも、今の本田さんには効き目があると思うねん」


「・・・ア、ア・・・リガト」

彼女は再び泣き出した。

「これ、実は結婚式の景品やってんけど、誰も名乗り出んくて余ったやつやねん。でも、何で余ったんかわかった気がする。このお守りが必要な人がいたからやね。神様も気が利くよな」

「ウン・・・ウン・・・」

彼女は、お守りを大事そうに両手で胸に抱きかかえた。
そして、鼻をすすりながら、

「もう、今日は、泣かされてばっかやん、私」

目を泣き腫らしながら、可愛い笑顔を見せた。