青春スパイ大作戦【短編集】


よっぽど辛かったんだろう。

誰かに聞いて欲しかったんだろう。

一度、壊れた彼女の心の堤防は、今まで貯めてきた涙を一気に放流し始めた。

「グスッ・・・グスッ・・・」

涙は次から次へと際限なく溢れ出る。

オレは、正直驚いたが、初めて本田さんの心に触れたのを感じた。

「・・・ゴメンネ。いきなり泣いてゴメンネ。ほんとにゴメン・・・」

謝る彼女に「いいよ気にせんでも」声をかけると、オレは、車に積んであるティッシュを2枚取って彼女に渡した。


「アリガ・・・トウ。・・・グスッ」



雨音だけが、彼女の泣き声を、優しく掻き消していた。