時間は元には戻らない。
そのことに気づいたのは。
取り返せなくなったときだった。
今だったらきっともっと違う世界にいけた気がする・・・。

最後の夏休みを楽しもう。そう言い出したのは恭子だった。
恭子、幸、そして私はいつも行動を共にしていた。
中学の時からずっと仲のいい友達だった。

私以外の二人には彼氏がいた。
二人は私よりずっとセンスがいい。
「恵もさぁ、ちょっとこのナツ出会いをもとめてゲットするしかないよ!」
恭子は私のほうにこぶしを振り上げた。
「ゲットって何を?」
「もぉ解ってるくせにぃ。」
幸が私を肘で小突いた。
「彼氏だよ!!ナツは恋の季節でしょ!」
自分の人生の中にもこんなドラマみたいな台詞を言ってくれる友達がいて私は幸せだなって思った。なんだか少しわくわくした。
「恵は案外地味で真面目だから・・・。逆に案外遊んでる感じの男の子の方がうまく行ったりするんじゃないかなってあたし思うんだけど・・・。どうかな?」
恭子は顎に指をあて値踏みするように私を見つめた。
「確かに・・・。地味to地味。M to Mからは何も生まれなそうな気がする。」
幸が笑ってそれに便乗した。
「こうしよう!まずはイメチェン!」

二人はまず私をドラッグストアーに連れてきた。
「これで恵の髪の色を変えよう。」
「まって、あたし髪を染めたこと一度もないの。」
「わかってるよ。ずっと一緒にいるんだから。夏休み中ぐらい大丈夫!あたしがご両親を説得してあげたっていいよ。」
恭子はいつも強引だった。でも私はそんな恭子が好きだった。
私は笑って頷いた。隣で幸も微笑んでくれた。