俺は無言で志音を見つめていた。
精神病になったら普通はショックを受けるはず。
なのに志音は全く持って気に留めていない。
バカなのかと思ったが、それは何か違うような気がする。
やっと笑いが収まったようで、
「まぁ俺にも色々あんの。」
と言った時の顔は笑っていたが、目の奥には悲愁の色が浮かんでいた。
「なんで、精神科に通おうと思ったの?」
今時の高校生が自ら進んで精神科なんかに通うわけがない。
俺ですら、何があっても精神科には絶対に行かないと思っていたのに。
まぁ秘書に騙されて連れて来られたのだが。
「はぁ?そんなの自分が可笑しいって思ったからじゃん。」
「は?無理やり連れて来られたんじゃないの?」
「自分の意志で来ましたけど?」
「…。」
本当に本気で変わった子だと思った。
だって絶対に自分の意志で精神科に来る高校生なんていない。

