高級車に乗り込んでからも、会話はなく
「…。」
「…。」
お互い無言だった。この乗り心地のいい空気も、運転も―…
…―全部、全部今日で最後。
悲しいなんてモノじゃなくて、心の奥底にぽっかり穴があいたかのようで、私はただ、ただこの乗り心地を心と体に刻み込んでいた。
こういう時こそ時間が経つのはあっという間で、時間は止まらない。
マンションの入り口に車が停まったとき、涙が出そうになって。
…―――でも泣かなかった。
いや、泣きたくなかった。
それが私ができる芯さんへのお礼だから。
小さく息を吸って、
「その髪型、すごく似合ってます。…―綺麗ですね。」
最後に私の想いを伝えた。