ガタガタ震える女。
冷淡な眼差しで女を見る夜琉。そんな夜琉を哀しそうに見る璃玖。

そんな3人を周りで見守る弘樹や紅雨、南月に秋や直也をはじめとした狼那連合の面子。


辺りを包む空気は異様で、冷たい。


夜琉が静かに女に向かって足を一歩踏み出した時、


「……―――夜琉。」


柔らかい、声が聞こえた。

決して大きくない声、むしろいつもより張りのない声。


なのに―…


ピタリと足を止めた夜琉。


なのに――…
一瞬で辺りが暖かい空気に包まれた。

いつもより張りのない声だが、存在感の大きい声。それはここにいる皆がこの声を、待っていたからなのかも知れない。


止めた足、ゆっくり振り返る夜琉は本当に静かに小さく


「由莉。」


呟いた。