夜琉はそのドアから一旦視線を外し、
「芯、」
と俺の名前を呼ぶと、鋭い射るような視線を向けてきて
「…―お前は俺にこれ以上何を望む?」
威圧的な雰囲気をまといながら言いはなった。
その言葉に俺はこれでもかってぐらい目が見開かれるのが分かった。
驚き過ぎて声を出すことも出来なかった。
夜琉はすぐに視線を戻し、検査室から出てきたベッドに寝かされたままの由莉さんを見つけると、歩みよることもせず、ただじっと硬く目を瞑っていた。
病室に運ばれて行ったであろう由莉さん。
それをただ目を瞑って見送った夜琉。
きっと夜琉は目を閉ざしたままの由莉さんを見たくなかったのだろう。
歩みよりたい、だけど歩みよることが出来ない。
ココロのなかで葛藤していた夜琉は何を想い、硬く目を閉ざしていたのだろうか。
運ばれていった由莉さんが残した空虚な空気。
静まり返った廊下に
「金堂さんの親族の方ですか?」
医者の声が届いた。

