ミラー越しに夜琉を見ると冷めた目でどこかを見ていて、最近はあまり見る事のなかったタバコが右手にはあって。
「――………。」
俺は目を伏せた。
肝心な時に何もできず、ただ見守る自分。
(―…情けない)
そう思わずにはいられなかった。
―――――
総合病院の正面入口の前に車を停めて運転席からいったん降りると、夜琉の座っている側の後部座席のドアを開けた。
それにも反応を示さない夜琉。
「……―夜琉。」
小さく呟いた俺の声に車を降りた。
前もって連絡を入れておいた俺の仲間に視線で合図をすると、仲間は
「芯さん。」
と、ゆっくりと現れる。
「車を駐車場に。」
と言った俺に頭を下げた仲間を見て、院内に入ろうとする夜琉の少し後を歩いた。
病院の独特の匂いが鼻をかすめるのも気にせず、受付の横の壁に背を付けた夜琉の前を通りすぎ
「先ほどこちらに運ばれた金堂由莉は?」
と受付で聞くと
「少々お待ち下さい。」
と言われ、その受付人はカタカタとパソコンを操作しだした。