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「着きました。」
その声でようやく俺は目を開いた。
運転手は俺たちが座っている後部座席のドアを開け、頭を下げながら俺と南月が車から降りてくるのを待っていて、
(南月らしいなー…)
と小さな笑みが零れた。
完璧な身のこなしで控えめな態度の運転手。南月の躾がかなり行き届いているのは一目瞭然だった。
俺、南月の順で白塗りの高級車から降りる。
降りて直ぐ目の前には華月の大きな正門。
ちらほらといる生徒たちを見るところ、終礼の時間帯らしい。
華月の大きな正門に違和感の全くない高級車から降りてきた俺と南月を見て、驚愕した顔を見せる華月の生徒たち。
「良いタイミングだな。」
と呟いた俺に南月は
「こっからどうするんですか?」
似合わない標準語で聞いてくる。
「今から下校の時間だろ?この門辺りにいて華月の生徒に直接噂をながすんだよ。」
「…。」
「…100%の確率で噂は全校生徒に回るよ。」
「…流石。」
こんだけ狼那連合が動けば華月だけじゃなくて、ここら一帯には広まるだろう。

