絶対ヤバい。

確実にヤバい。


あんな怒声をあげる程、キレた夜琉さんを誰が止めればいい?
夜琉さんがまじギレする事はほとんどない。
しかも、まじギレして静かにふつふつと怒りを露にすることはあっても、怒鳴り声をあげてキレた事はないはずだ。


ヤバい、な。


由莉を突き落とした奴があまりにも可哀想な気がするが、自業自得としか言いようがない。


(とりあえず、今は由莉の元に戻ろう。)


そう思って階段の下に戻ると、保険医の先生が苦い顔をしていて、


「由莉は大丈夫ですよね。」


そう聞かずにはいられなかった。


“大丈夫だよ”


そう保険医の先生が言うのを期待して待っていたが、現実はそう甘くなくて。


「ちょっと危ないかも。」


「…ッ!!」


「多分頭を強く打ってるし、左の薬指…靭帯切ってなければぃいけど…。」


そう言われて指を見ると、青く晴れ上がっていて、


「階段で変な打ち方したのかもね―……。でも、こんだけ強く打ってるって事は…誰かに押されたようね・・・。」


すぐに目を反らした。


由莉のあまりにも酷い状態をみて、怒りが込み上げる。


“誰がこんなことを…ッ!!”


気を落ちつかせないと、冷静に対処出来なくなりそうで、必死に怒りをかみ殺す。


気をまぎらわそうと、千佳を探すと


「千佳…」


階段の上で倒れていて。

でもそれが不幸中の幸いなような気がした。


だって千佳は由莉が救急車で運ばれていく姿を、ぼろぼろな姿を見たらきっと壊れてしまう。

それほど、千佳は由莉を想っているんだ。