「ねぇあの時なんで『ありのままの自分を忘れないで下さい』って言ったの?」
「それは、あの時璃人さんが女装している事に気づいたからかもしれません。」
「え?」
「抱きしめられた時に気づきました。男の人って感じの体つきをしていたから。」
「…そっか。志音といい由莉ちゃんといい逢った瞬間に私の女装を見抜くんだから。」
「今の璃人さんには、ありのままの自分を忘れないで下さい、とは言えません。だって女装する事になんの躊躇いもないから…」
「…え?」
「あの時の璃人さんは無理して女装していたように感じたんです。だから女装し始める前の自分を忘れないでいて欲しかった。でも今は…
璃人さん自身が今の自分を認めているから、それでいいと思います。…昔の自分を思い出さないといけない必要がないから。」
「…そっか。」
「…私の兄が同じ事を言ったなら、それは私と同じ事を思ったからです。」
「…うん、良かったよ。今日由莉ちゃんと話す事ができて。
璃玖と仲良くなることも出来たし、ずっと引っかかっていた『ありのままの自分を忘れないで』の意味も分かったし。」
「…はい。」
「ありがとう。」
そう言って綺麗に笑った璃人さんに心が温かくなった。

