たったちょっとの間、この待合室で話しただけの仲なのかもしれない。
けど、俺にとって志音はもう大切な存在で。
ずっと1人で頭を抱え、待合室で志音の帰りを待っていた。
昼過ぎだった時刻は刻々と進み、西日がまぶしい夕方になった。
病院も閉まる時間になっても志音は現れなくて、もう待って居るのも限界かと思った時
「大丈夫ですか?」
「…。」
と言う安否を気遣う看護師の声と共に志音は現れた。
「志音っ…!!」
走って駆け寄った俺を見て、口元にだけ笑みを作って
「まだ居たのかよ。」
と言った。
でも、その笑みは疲れきっていて。眩しさの欠片もない、冷たい笑みだった。

