君を想えば

康介の家は、

私の家からバスでちょうど3つ離れたバス停の近くにあった。

実際バスに乗ってみると、

物凄く近い。

近いけど、

普段は行かない方面だから、

周りの景色が、

やけに新鮮に思えた。



そして私の緊張は半端ない。

メーターが完全に振り切ってる感じ。

康介の家が近くなるたびに、

私の言葉数はどんどん減っていった。



バス停から康介の家までは、

徒歩2分くらい。

その道を、

手を繋いで一緒に帰る。

誰かに目撃されたい気分。

私達は、

付き合ってるんだって思われたい。



玄関のドアを開け瞬間、

康介のおばさんにちょうど出くわした。

「あっ…お邪魔します!!」

「いらっしゃーい!春菜ちゃんでしょ!?」

凄い勢いで聞いてきた。

てかおばさん若っっ!!


「あ…はい。覚えてます?」

「覚えてる覚えてる!!春菜ちゃんのお母さんと一緒に役員やってたし〜!!

いやぁ、素敵な女の子になってビックリ!!

入りな入りなぁ〜!!」

……良かったぁ〜!!

康介のおばさんはとっても奇策で、

とっても話しやすかった。

ママのことまで覚えてるなんて、

ここの親子はやたらと記憶力がいい。


玄関の下駄箱の上に、

バイクのヘルメットが3つ飾られていた。

「ヘルメット?」

「おう。

先輩からもらった。

俺も近々バイクの免許取りに行くから。」

「へ〜!!」




康介の部屋は、

階段を上がってすぐのところにあった。

隣りは弟の部屋。



ーガチャ…ー


「お邪魔します…。」