これくらい気合いを入れないと、思い切れないと思ったから。
少し……いや、かなり恥ずかしいけど。


「へぇ……似合うじゃん」


君の顔もまともに見られず、着慣れない浴衣姿の私はひとこと頷いて、歩きだす。


立ち並ぶ屋台。
遠くからお囃子が聞こえてくる。
夏祭りに思い切って誘ってみたのは、決心したから。


もうすぐ始まる打ち上げ花火。
最後の花火があがるまでに、私の想いも打ち上げよう、と。


程なくして、夜空に大輪の花が打ち上がる。
ひとつ、ふたつ。
色鮮やかに咲き誇る。


「きれい……」
「きれいだな」


ハモっちゃった。


思わぬことにドキドキしながら、夜空を見上げて、私は想いをめぐらせていた。


いつ言おう。
どう切り出そう。


タイミングを見計らっているうちに、打ち上げが一度途切れた。


ふと訪れる、静寂。
今だっ!!


「あのさ」
「あのっ!!」


しまった。
またハモった
おまけに声が上ずった……。


君と目が合い、お互いに思わず吹き出す。
MAXだった緊張が、嘘みたいに。

「俺からでもいい?」
「う、うん」
「……たぶんおまえが言おうとしたこと……から」

君の背中越しに、二度目の打ち上げが華やかに始まる。
……よく、聞こえない。


「??」


困り顔の私の耳元で、君が叫ぶ。


「俺と同じだと思うから、今度は先に言わせて」


抱き寄せられた肩越しに、夜空を彩る、大輪の花。


「好きだよ」


……君からの言葉で始まった、二人の想いが、夜空に大きく打ち上がる。