いよいよ退院の日を迎えた。



まだ時間が有ったので、いつもの様に売店まで出かけた。



そこにはもうあの男の子の姿は有るはずも無かった。



売店で新聞と缶コーヒーを買って病室に戻る途中、小児病棟という文字を目にした。



何かに導かれる様に、足が自然とそちらに向いていた。



その階だけは扉か二重になっていて、暗証番号を押さないと入れない様になっていた。



私は扉の外からほんの少し中を覗いていた。



そこには明日を生きたくても生きる事の出来ない小さな命が、今日を精一杯生きていた。



その姿を見ていたら、いつの間にか頬を一筋の涙がこぼれ落ちた。








助かったこの命!



どんな事が有っても無駄に出来ないと思った。






3階小児病棟が“命”の大切さを教えてくれた。