トイレに入っておよそ5分。

ガチャリ。

ドアを開けると、心配そうに私の方を振り返る秋仁さんとお姉ちゃん。

「柊子・・・どうだ?」

すぐに立ち上がり私の側にやってきた秋仁さんは、そっと私の肩を抱いた。

俯いたまま、検査薬の入った袋を握り締める。

「・・・・・た」

小さな声で答える。

「ん?・・・なに?」

秋仁さんの優しい声と温かい腕のぬくもりに、自然と涙が溢れる。

「できて・・・なかった・・・」

はっきり聞こえたのだろう。

キュッと肩を強く掴まれたと同時に

「・・・そうか」

優しい秋仁さんの声がした。


そのままソファーに座らされた。

何も言わずに下を向いている私に

「大丈夫か?」

秋仁さんが声を掛けてくれる。

「・・・私・・・」

「ん?」

「何でかな。・・・秋仁さんが好きなのに・・・凄く好きなのに・・・出来てないって分かってホッとした」

本当に秋仁さんが好きなのに。

陰性とでた時、『良かった』って・・・そう思った。


「それでいいのよ」

口を開いたのはお姉ちゃんだった。

「え?」

「ま、秋仁はちょっと残念そうだけど?」

「・・・うっせぇ」

今まで下を向いていた私は、ハッと顔を上げて秋仁さんを見る。

困ったように笑う秋仁さんに、ぎゅって心が掴まれた感じになる。