「柊子が戻ってきたから、俺帰るよ」
抱き合ってる私たちの横を通り過ぎるライ君。
「ライ君・・・」
そっと矢崎さんから離れると、ライ君は私の頭をゆっくりと優しく撫でてくれた。
そして
「・・・もう、俺の役目は終わりかな」
ぼそっと呟くように言うと、靴を履く。
ライ君の言葉の意味が良くわからない。
役目?
「じゃあな・・・秋仁」
軽く手を上げて挨拶すると
「ああ・・わるかったな」
頭の上の方で矢崎さんの声がする。
ドアに手をかけたライ君は
「あ、そうだ」
行くのをやめて、私のほうを見る。
「柊子」
「・・・ん?」
「前に車で話したことだけど・・・」
車で?話?
・・・・ああ、紗江さんのことかな?
「・・・うん」
「あれ、俺の勘違いだったよ」
ニヤリと笑って言うと、
「それだけ、じゃあな」
アパートを出て行った。
勘違い?・・・何が?
肝心なところが抜けてるよ〜。
ちゃんと説明してよ〜。
「・・・とりあえず、その買い物袋の中身・・・冷蔵庫にいれるか」
「あ、うん」
立ったまま考え込んでしまった私の買い物袋を持ってくれる。
ライ君と話をしたからか、涙は止まってた。
そして慌てて私も矢崎さんの後ろに着いていった。