そーっと足を玄関へと踏み入れる。

・・・泥棒じゃないんだから。

しのび足ってどうなの?

なんて考えていたら。


ドタッドドド・・・・・ガツッ。

「痛ぇ」

矢崎さんが慌てて足をぶつけながら玄関を覗いた。

「柊子!?」

「あ、・・・うん・・あの・・・」

なにから話していいのかわからず、立ちつくしてる私に近づいてくる。


「あ、あの、夕飯の材料買ってきたの・・・夕飯一緒に食べようと・・・おも・・・って」

私が説明を言い終わる前に

「心配しただろ!!」

抱きしめられてた。

「・・・はぁ・・・携帯置いていくなよ・・・どこ行ってたんだよ」

「え・・・あの、公園とか、ファ、ファミレス・・・」

ぎゅうっと抱きしめる腕に力が入って

「い、いたいよ・・・」

「うるせー。心配かけたんだからこのくらい我慢しろ」

そんな事をいいながら、少しだけ力を緩めてくれる。



・・・ムリだよ。

やっぱりダメだよ。

私から別れを言うなんて出来ない。

離れることなんて・・・出来ないよ。

この温かさがなくなるなんて・・・考えられない。



気がつけば涙が溢れてた。

「・・・ううっ・・・」

そっと矢崎さんの背中に腕をまわすと、ゆっくりと頭を撫でてくれる。

「あんまり心配かけんな・・」

その声は本当に心配していたことが良くわかる、弱弱しい声で。

「ご・・ごめん・・・なさい」

私は、矢崎さんにしがみ付いたまま誤ることしか出来なかった。