紗江さんのであろうピアスを持ち、呆然とする。
・・・昨日ここで私と矢崎さん、寝たよね?
どんな気持ちで一緒に寝たんだろう。
紗江さんとは何も無いって言ってたけど、ベッドを貸すの?
ソファーじゃダメだったの?
私の頭の中を嫉妬と妄想が駆け巡る。
どうして・・・。
どうしてよ。
不安がやっと、やっと少しだけ安心に変わったと思ったら・・・もっともっと不安になって。
『そんな気持ちのまま秋仁と付き合っていけるのか?』
ライ君の言っていた言葉が頭をよぎる。
もう、限界・・・なのかな・・・。
好きなだけじゃ一緒にいること出来ないのかな・・・。
昨日受け止めてもらった涙より、苦しく辛い涙が頬をつたう。
「うっ・・・えっ・・・なんでよぉ・・・」
その場にしゃがみこんで、泣きじゃくった。
私がした初めての恋は辛くて。
目を閉じれば浮かんでくるのは矢崎さんの優しい笑顔と、頭を撫でてくれる大きな手の温かい感触。
好きなのに。
大好きなのに・・・。
私は紗江さんのピアスを4つに折ったティッシュの上にのせ、テーブルの上に置いて・・・・
パタン。
矢崎さんが置いていったアパートの合鍵でドアをしめて、アパートを出た。