「ところで、紗江は何してんだよ?」
「ん?買い物。明日お父様の誕生日パーティーがあってね。そのための帰国だから」
お父様・・・・お嬢様なんだなぁ。
なんて暢気に会話を聞いてたけど。
「そうか・・・芳春(ヨシハル)さんとは、うまくやってるのか?」
「あたりまえじゃない」
微笑みながら、紗江さんは矢崎さんの肩を軽く叩く。
その動作に・・・私の中で嫉妬が生まれる。
「この子が長男の海(カイ)よ」
手を繋いでいる男の子は、ちょっと恥ずかしそうに紗江さんに隠れてた。
矢崎さんは海君の頭を優しく撫でる。
「実は、お腹にもう一人いるんだ」
「は?マジで?」
「うん!」
幸せそうに微笑む紗江さんに
「そうか」
優しく微笑む矢崎さん。
・・・・面白くない・・・私。
女の知り合いの人と会うときに、嫉妬が顔にでちゃうと困るから、必死で口だけは笑うようにしてた。
半分泣きそうになりながら。
今もそう。
ニコニコしながら話を聞く振りはしてるけど、本当は嫉妬でどうにかなりそう。
・・・なんでこんなに心が狭いのかな。
自分自身にちょっと凹む。
別れ際に
「あ、そうそう。明日のパーティ、秋仁も来てよ」
と、誘う紗江さん。
「は?なんで・・・」
ビックリした様子だったけど
「いいじゃない?恩人だし。お父様も会いたがってるし」
「まぁ、全然顔出してねーけど・・・・」
ちょっと困ったように返事をする。
紗江さんのお父さんのこと知ってるんだ・・。
「でしょ?それと木曜日は雷太と送別会を秋仁のアパートでやるから」
「はあ!?」
「それでは、ごきげんよう」
いいたいことだけ言うと、紗江さんは行ってしまった。
「・・・・何がごきげんようだよ・・勝手に決めやがって・・・」
呆れながらも、笑ってる矢崎さんに胸がチクって痛んだ。
きっと2人にしかわからない関係がある。
こんなときは私は入っていけないんだ・・・。
それがちょっと寂しい。