久しぶりにライ君がいない日曜日。

矢崎さんと私は買い物に出かけた。

「人がいっぱいだね〜」

手を繋いで人ごみの中を掻き分けながら歩いてた。

小さな路地に入ったところで

「あれ?秋仁?」

矢崎さんの名前を呼ばれて、2人で振り向くと

「紗江!?」

小さな男の子の手を引いて、綺麗な女の人が立っていた。

「うわっ、やっぱり秋仁だ」

女の人は笑顔で矢崎さんに近づく。

「お〜、いつこっちに着いたんだよ?」

「うん?昨日」

「連絡くれたらいいのに」

「いろいろ忙しくてね」

繋いでいた私の手を離し、女の人に近づく矢崎さん。

手を離されてしまったことが少しショックで、その場から動けなかった。

・・・ライ君に初めて会ったときは、手を離さなかったのに・・・。

・・・その人は特別なの?

今まで幸せだった気持ちが、不安へと変わる。


「あれ?彼女?」

「ん?・・ああ」

矢崎さんの隣に立ってる私に気がついた紗江さんは、私を見るとにっこりと微笑んだ。

「こんにちは。秋仁さんの友達の 松山紗江(マツヤマ サエ)です」

私に頭を下げてくれる。

ふわっとやわらかい笑顔をする人だなぁ。

なんて思いながら私も頭を下げた。

「あ、こんにちは。藤崎柊子です」

「柊子ちゃんか〜・・・・秋仁、趣味変わったね」

・・・・またですか。

必ず言われるよね・・・。

「・・・いいだろ、別に」

呟くように矢崎さんが言うと

「へぇ〜・・・・ほ〜・・・・」

と、紗江さんが笑う。

・・・小春さんと同じ反応だ。