「柊子?」
・・・わかってる。
矢崎さんは仕事をしてる。
私のように学生じゃないから、会えないときも沢山あるってこと。
私がもっと大人だったら。
私がもっと矢崎さんのことわかってあげられたら・・・考えて、考えて。
結局できるのは我侭を言わないことくらいで・・・。
矢崎さんを見つめると・・・キスをくれた。
「もっと、我侭いってもいいんだよ?柊子は我慢しすぎだ」
「え?」
「多少の我侭だったら、聞いてやれるから」
矢崎さん。
「うん。ありがとう」
その言葉と優しいキスで十分。
また頑張れるから。
少し寒くなって来たところで車に戻った。
エンジンをかけて、後ろの席から何か取り出す。
「これって何?」
「あ・・・」
矢崎さんが持ったのは私が持ってきた袋。
「あの・・・プレゼントとケーキ」
驚きながら袋に手を入れる。
「これ・・・開けてもいいの?」
「う、うん。気に入ってもらえるといいんだけど・・・」
包みを丁寧に開けて、出てきたのはキーケース。
「・・・マジかよ」
「え?」
「これ、高かったろ?」
「え・・・なんで?」
「俺、目つけてたから」
「え!?」
「今月財布買ってさ、来月あたり買おうかと思ってたんだ」
「ほ、ほんとに?」
「ああ・・・まさかもらえるとは・・・・」
マジマジとキーケースをみつめてから、
「ありがとう。すげぇ嬉しい」
飛び切りの笑顔でお礼を言ってくれて。
「だけど、今回でやめろな?」
「え?」
「こんな高いの、もう受けとらねーからな」
そう言って優しい笑顔で、頭を撫でてくれた。