矢崎さんが車を運転して、私が助手席に乗る。

いつものこと。

だけど、ちょっと寂しい気持ちになってた。

結局、ケーキも食べられなかったし、プレゼントも見てもらえなかったな・・・。

車から窓の外を見れば、クリスマス一色で彩られて歩いている恋人達はとても幸せそうに見える。

正直羨ましい。

「柊子?」

いつもと違う私に気が付いたのか、矢崎さんが名前を呼ぶ。

「ん?」

「どうした?」

「ううん。イルミネーションが綺麗だなって」

「・・・そうだな」

それだけ言うと、矢崎さんは黙ったまま車を走らせた。



あ、あれ?

こっちは家の方向じゃないよ・・・ね?

「矢崎さん?」

「ん?」

「あの・・・どこに?」

「もうすぐ着くよ」

矢崎さんが言うと、車は小さな駐車場に入る。

「降りて」

車を止めた矢崎さんが車を降りるから、私も慌てて車を降りる。

車に鍵をかけた矢崎さんが私の手をつなぎ、歩き出す。

少し坂道を上がったところで、足が止まった。

「上見て?」

上?

私がそっと顔を上げて上を見ると、そこには・・・・満天の星空。

「すごい。綺麗・・・」

「空気が澄んでるから、星が良く見えるな」

矢崎さんも星空を見ながら言った。

「・・・クリスマス・イブだし・・・柊子寂しそうだし」

チラッと私を見て、意地悪く笑う。

「だって・・・」

「いつも、我慢させてばっかでごめんな」

・・・どうして、どうして矢崎さんは私の欲しい言葉がわかるんだろう。

プレゼントが欲しいわけでも、困らせたいわけでもなくて・・・安心する言葉が欲しいときがあるの。

触れたいときもあるし。

側にいたいときだってある。