走ってもブーツだからうまく走れなくて、足がもつれて転びそうになったところで走るのをやめた。

いつも、いつも私ばっかり。

矢崎さんは、全然私を好きになってくれない。

「なんでよ・・・」

独り言のように発した言葉は、冷たい空気の中に吸い込まれてく。

あの女の人は誰よ。

なんで部屋に入ってるの?

なんで・・・・。

早足で歩いていると



「待てって」

腕をガシッっと掴まれて。


振り向くとそこには、息が少し上がっている矢崎さんがいた。

「・・・なに?」

「何って・・・送っていくって言ったろ?」

「いいって言ったよ・・・」

「は?遅いし危ないだろ?」

「大丈夫だよ。来るときも平気だったもん」

腕を振り払おうとしても、強い力で掴まれてて振り払えない。

「・・ふざけんな。送ってく」

もう、ヤだよ。

優しくしないでよ。


「もう、やめてよ」

強引に腕を引きながら歩く矢崎さんの背中を見ながら、呟いた。

「え?」

私が何か言ってることに気が付いたのか、歩くのをやめて振り向いた。

「もう・・いいよ・・・」

「何が?」

「ほっといてよ」

「は?何言ってん・・・」

「もう、いいって言ってんの!」

「柊子ちゃん?」

私の声が大きくなって、矢崎さんがビックリしてる。