【柊子】
ドアを開けた人。
それは私がずっと会いたかった人。
ベッドから起き上がった私は、とりあえず、髪を手櫛で直した。
「入ってもいいか?」
「あ、うん。どうぞ」
ゆっくりと開けられたドアからフッと香る秋仁さんの香り。
どうしよう。
泣きそう。
ゆっくりと入ってきた秋仁さんはベッドに腰を下ろした。
斜め後ろから秋仁さんの姿を見る形になってて。
向かい合ってない分、気持ちが少し楽だった。
「ど、どうしたの?」
なかなか話さない秋仁さん。
思わず私のほうから声を掛けてた。
「手紙」
呟くように言葉を発した秋仁さんは、私を見ることはなくて。
・・・手紙。
ああ、そうか。
「うん」
「さっき読んで・・・」
「そう。・・・あ、それで会いに来てくれたの?」
「え、ああ、ん、まぁ、それもあるんだけど」
何だか歯切れの悪い返事。
手紙に書いた
『本当は会ってお別れを言いたかった』
最後のわがまま。
秋仁さんはそれを読んで来てくれたんだね。
「ありがとう」
「・・・」
「もう、いいよ。もう、十分だから・・・」
こうして会いに来てくれた。
もう、本当に・・・。
「柊子」
ゆっくり振り向いた秋仁さんの顔は、この前アパートに行ったときの冷たい表情ではなくて・・・付き合っていたときの優しい顔で・・・。
その顔を見た瞬間、涙が止まらなくなった。



