年上の彼氏


「その日は母も私もいなくて、父親は家を出て行く日だった。夕方に私かお母さんが帰ってくるまで柊子と一緒にいる約束をしてたのに」

私は父親を許せていない。

「玄関に柊子を残して「タバコ買ってくるから待ってなさい。帰ってきたらここへ行こう」そう言って遊園地のチケットを渡したの。柊子は待ってた。お昼も食べず、お水はかろうじて飲んでたみたいだったけど・・・私が帰ってくる夕方まで、遊園地のチケットを握り締めて」

「・・・・」

「私が帰ってくると、「お父さん待ってるの。遅いねぇ・・・ほらっここに行くんだよ?」嬉しそうに見せてくれたチケットは、使用済みのものだった。先週浮気相手と行った遊園地の使用済みのチケットを柊子に握らせていたのよ!」

何度思い出しても悔しい。

「柊子から取り上げて、破こうと思った。なんて酷いことするんだろうって、本当に吐き気がするほど嫌気がさしたわ。・・・だけど柊子は「やぶらないで」って。涙を一杯溜めて、大切に胸に抱えてた。それを見たら取り上げられなくなっちゃって。・・・それからそのチケットはどうしたのか分からないけど。・・・父親が帰ってこない事を理解するまでには時間が掛かったと思う・・・柊子は父親の愛情を知らないの。もしかしたら誰も好きにならず一人で生きていくんじゃ無いかって心配だった。でも、秋仁を好きになった」

秋仁はハッとしたように私を見る。

「我慢ばっかりして、わがままなんて言わない柊子が秋仁と付き合って変わった。表情も柔らかくなったし、何より幸せそうだった。・・・秋仁が包んでくれてるんだって思ってた。男の人に甘えることを知らない柊子にゆっくりだけど、教えてくれてるんだって思ってた。・・・だから柊子が秋仁を裏切るなんてありえないのよ・・・裏切られる事の辛さを誰よりも分かってるから・・・」

「・・・俺のほうが子供だったって訳か・・・情けねぇ」

「ねぇ秋仁、柊子は手紙で別れたって言ってたんだけど・・・」

私の言葉でハッと棚を見る。

そこにはまだ開けられていない封筒。