年上の彼氏



その日、私は秋仁さんに手紙を書いた。

最初で最後のラブレター。

付き合ってもらえたことが奇跡みたいなものだった。

自分なりに大切にしてきたつもりだった。

だけど、それは秋仁さんには届かなかった。

指輪をもらったとき、

『大事にする』

そう誓った。

「大事にしてきた・・・はずだったんだけどな・・・」


『今まで、ありがとう』

最後にこの言葉を書き、封筒に手紙と指輪と、高校を卒業したときにもらったアパートの合鍵を入れて封をした。



次の日は休んでもいいようにして、秋仁さんのアパートに向かう。

だってこれを渡したら、終わり。

手紙には『別れましょう』と書いてある。

沢山の思い出をもらって、私は幸せでした。

本当に幸せでした。


秋仁さんのアパートでインターフォンを押すと

「はい」

懐かしい声。

ああ、やっぱり好きだな。


私を見ると呆れたような顔をする。

「なに?」

もう、名前も呼んでくれないんだね。

「これ・・・」

そっと取り出した封筒。

「何?」

「・・・読んで欲しいと思って・・・」

「ああ」

そっけない返事をして、手を差し伸べてくれる。

だけど、私が封筒を離せなくて、引っ張りあいみたいになっちゃって。


「渡しにきたんじゃねーの?」

フッと笑った秋仁さんの笑顔。


もういい。

十分だよ。

最後にあなたの笑顔が見れたから。

私はそっと封筒から手を離す。


「じゃ・・・」

パタン。

閉められたドア。

溢れて止まらない涙。

最後に一言

「大好きです。・・・さようなら」

呟いて、私は車に向かう。


もう、ここに来ることも無いんだろうな・・・。

涙は止まらなくて。

それでも離れるしかないこの思いをぶつけるところもなくて。




抜け殻になった。