自分の部屋にいた私は着信の相手を見て、一度ゆっくり深呼吸をした。

「もしもし?」

『柊子?』

「うん」

『雷太だけど・・・』

「うん」

私が知ってるライ君とは違う話し方に、何か妙に緊張しちゃう。

『柊子さ・・・その・・・夏穂のこと何か知ってる?』

何か知ってるか・・・と聞かれたら、知ってる。

だけど私の口からは言えない。

「前に一度だけ、聞いたことはあるけど・・・詳しいことは知らないよ」

嘘はついていない。

お姉ちゃんが私に話をしてくれたのは、心の中にあるほんの一部分だと思う。

私に話すことと、ライ君に話すことはきっと違う部分がある。

だから、簡単に内容は言えない。

『どこまで知ってる?』

「どこまでって?」

『夏穂が妊娠してたってこと・・・それは本当なのか?』

「・・・・えっと・・・そのことも含めてちゃんとお姉ちゃんに聞いてみたほうが・・・私からは言えないよ」

『秋仁と同じこと言うんだな』

「え?」

『今更、連絡して何を言えって?』

「・・・おねえちゃん言ってった。ライ君の耳に入ることもあるかもしれないって。そうしたらちゃんと話をしなくちゃね・・・って」

『・・・チッ』

「お姉ちゃんの友達に会ったんだよね?」

『ああ』

「じゃあ、ライ君が聞いたこと、お姉ちゃんも知ってるかもしれないよ」

『知らないかもしれないだろ』

ライ君らしくない。

どんなことでもちゃんと受け入れる人なのに・・・。