「雷太にバレた」

アパートのドアを閉めたと同時くらいに、秋仁さんが呟いた。

「バレた?」

言葉の意味が分からない。

何がバレたの?


「・・・夏穂の妊娠」

「えっ・・・」

高校のとき妊娠したこと?

「それって・・・高校のときの?」

「ああ。・・・高校のとき夏穂と仲良かった友達と、昨日町でたまたま雷太が会ったらしくて、そのときに言われたらしい。「夏穂大丈夫だったのか」って。雷太は何のことかさっぱり分からなくて、詳しく聞いてみたら俺が知ってるみたいなことになって・・・で、事情を聞きにきたって訳だ」

「・・・そう・・・」

いつかは、バレるかもねってお姉ちゃんも言ってたけど・・・。

「俺も詳しいことはわからねーんだ。名前を貸しただけだし。医者に一緒に行ったわけでもないしな。・・・でも、雷太は勘違いしてて。・・・だから詳しいことは夏穂本人に聞けって言ったんだけどな。「どの面提げて今更連絡しろって言うんだ」って切れちまって。・・・ま、確かに雷太にしてみたら、そうかもな」

「秋仁さん」

「柊子」

「ん?」

「もしかしたら、雷太がお前に連絡してくるかもしれない」

秋仁さんが私の肩を掴む。

「私に?」

「だけど、夏穂の事は言うな。本人どうしの問題だから、どうするかはあいつらに任せるんだ。・・・わかったな?」

真剣な目。

「わかった。言わないよ。私もお姉ちゃん達にはちゃんと話し合ってもらいたいから」

「ん。ありがとう」

ふわっと優しく抱きしめられて、腕を秋仁さんの背中にまわした。




秋仁さんの言うとおり、それから2日後ライ君から電話が掛かってきた。