『葵…どこだ?』


建物の中は静まり返っていた


「…ヒック…ヒック」


『誰か居んのか?』


建物の奥からすすり泣くような人の声が聞こえた

『葵か…?』


何度呼んでも返事はなかった


『…たくっ葵。隠れてねぇで出てこいよって…皇紀?』


建物の奥に見えたのは葵ではなくしゃがみこんですすり泣く皇紀だった


『何でお前がここに居るんだよ…』


「…梓さん…が…」


『梓?何でお前が梓って知ってんだ…葵!!!』


皇紀の後ろにはぐったり横たわる葵の姿があった

『おいっ…葵?葵ー!!!』

ピチャッ…


倒れた葵を起こすと自分の手にはどす黒い真っ赤な血がついた
よく見ると葵の腹部には血がついていた


『葵!!!おいっ皇紀っ!!!泣いてねぇで救急車!!!』

「はいっ…」


皇紀は言われた通り救急車を呼びに外に出た


『葵…しっかりしろ!!!んなとこで死ぬんじゃねぇぞ!葵の口からはまだ…まだ何も聞いてねぇんだからな!!!』


俺はまだ出てくる葵の腹部の血を押さえながら叫んだ…―