「ったく…お前らは暇さえあれば喧嘩」


ため息をつきながら呟く郁兄

『しゃーねぇだろ。暇なんだから』

「つーか角で殴るなよ!!!」

私の後に続いて口を開いた龍翡

「だけど郁さん実家に戻ったんやないの?」

ずっとテレビを観ていた大和が割って入ってきた
「あ。確かに」

郁兄はこの秋休みを使って実家に帰る予定があった…ていうか単に休みの間私達の世話から逃れるための口実なんだけどな…


「俺は優しいから暇をもて余しているであろうお前らにいい話を持ってきてやったんだ」


優しい…滅茶苦茶嫌な予感がしてきた…

そんな私の予想をよそに周りの奴等は

「マジか!?」

「さっすが郁さん!!!」

などと盛り上がっていた

「実はな俺の仲間が北海道のスキー場で旅館を開いてるんだ」

『郁兄の仲間で…スキー場の旅館…』

予感的中だ…

「…でだ。お前らを連れてきてもいいと言って来ているんだが…って葵お前どこに行くんだ」


やばっ…
とばっちりが来る前にその場から逃げようとしていた私はあっさりと見つかった

『いや〜ちょっとトイレに…』

「さっき行っただろ」

そう言ってにやりと笑う郁兄

 「ま!お前は当然来るよな?」

計画的犯行だ…

そう悟った私は龍翡達に促すように口を開いた

『でも短い休みだからさ…行くの面倒だよな?』

「何言ってんだよ葵!北海道だぜ!行くに決まってんだろ」

大輔は興奮しながら叫んだ

『…っち…龍翡は行かないだろ?』