籠の鳥

俺はまだらに首を振ってからマオに向き直った。

「マオも、ありがとうな…」

マオは笑い声を上げた。

そして表情を変えて言う。

「何をおっしゃいますか、さっちゃんがいなくなったら1つ楽しみ減るでしょう?」

「あー…マオ黒い、黒いから。てかさっきの俺の言葉返せ」

失笑。



村が近くなってきた頃、マオが片手でさやを担ぎ、荷物をあさった。

「役に立つかなと思ってきたんだが、正解だったな。虎猫にも使ってるんだが、さやにはキツいかも」

そう言って取り出したのは赤紫の角々しい石がついたブレスレットだった。

まだらが俺越しに顔を覗かせる。

「何ですか?それ」

「妖魔石、妖力とは別の力で妖力を制御するものだ。なかなか手に入らないから妖怪にはあまり活用されていない」

そう言ってさやの左手首につけた。

その直後にさやは人間の姿になる。

まだらは素直に驚いた。

「さっちゃんは今、強制的に人間の姿になってる。その分、どんなにさっちゃんが妖力を失っても死ぬまで人間の姿だ。村に入るには、妖怪の姿では駄目だろう?」