籠の鳥

さやには逃げ出した人物の気配が見えているのだろう。

どこに逃げたのかも完璧に分かっているようだ。

「さやっ!」

俺はさやを追いかけてやしろの裏側にまわった。

そこにはさやに追い詰められて尻餅をついて震える青年がいた。

コートを被っていて顔は見えない。

「さや!やめるんだ!!」

「え-何で-?」

「いいから」

強く言ってさやを引っ込めさせた。

そして代わりに俺が出る。

「大丈夫か?ごめんな、驚かせてしまって」

同じ目線に合わせるように俺はしゃがみこんで顔を覗いた。

フードの中で目が合って、咄嗟に目をそらされた。

「逃げんだもん。さや狼だし、追いかけたくなるのも当たり前だろ?」

「それは自然界の中だけでやってくれ」

そうさやに言いながら青年を立たせた。

未だに青年はさやを見て震える。

「それ…妖怪ですか?」

「それじゃない!さやだ!!」

「やめろ!さや」

吠えるさやに俺は怒鳴った。

身体を強ばらせる青年を庇う。

「あなた…妖怪退治屋ですよね?何故、妖怪を連れているのですか?」