籠の鳥

自分の頬にあてられた冷たい手に触れて、静かに口元を緩めた。


"「皆が笑っている真似をすればいい」"


笑顔を教えてくれた昔のマオの言葉を一心に思い出して笑った。

その笑顔を見たか否か、マオの手は力無く下がる。

フウが呼びかけても、固く閉じた目は開かない。



俯いたフウの顔から笑顔が消えた。


こんな感情はなかった…。


少なくとも自分が知ってる限りでは。



「自由になんてなれません…あなた様が記憶に存在する限り…」



そう漏らして、唇をなぞって冷たい口づけをした。

「妖怪が人間に恋をしたか…やめておけ。今こちらにおちればお前だけは生かしてやる。さぁ、立て」

「………」

フウはマオを腕に包み込んで立ち上がった。

「そいつは捨てろ。既にこの世にいない。邪魔なだけだ、捨ててこちらに来い」